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暗夜に灯火を失わないようにー後編
コーチング開始から1ヶ月たった頃に立てた目標のウルトラマラソンが中止になり、ここでモチベーションを落とさないぞ!と奮起してすぐさまターゲットを変更。フルマラソン3時間10分切りで大阪国際女子マラソンの基準を得ることを目標にして、コロナだろうが、仲間に会えず一人だろうが、開催が未確定だろうが、そんなことはお構いなしにひたすらに練習してきた8ヶ月。ついにはそのマラソンまで中止に…このまま灯火は消えてしまうのか。それでいいのか。
(前編はこちら)
夢じゃなくて目標
●●することが夢なんです!
そう言っているうちは、現実となるのはずっと先。夢を見るのは自由、わたしにも夢や憧れはあります。でも目標とは別です。目標は、やるのです、やり遂げるのです。結果はどうあれ、やり遂げることに面白さがあると思っています。そのために逆算して、今月、今週、今日、今、なにをするべきか考えるのが上手な人ほど夢を着実にモノにしている気がします。
大阪国際女子マラソンの基準(出ること、というよりも、その基準を満たす走力をつけること)を目指すようになってから、上手くいくことも上手くいかないこともありました。スピード練習に飽きて長い距離を走りたいとコーチに嘆いたり、長い距離ばかり走っていたらスピードを失ってコーチに愚痴ったり、再スタートしたら今度は猛暑で全然調子が上がらなくなってネガティブ発言連発したり。山あり谷ありだったけれど、フルマラソン3時間10分切りはそれでも有り得るんじゃないかという希望を持っていました。
でも、無情にも一心に練習を続けて8ヶ月目に長井マラソンが中止になりました。8月末のことです。残すレースは、1ヶ月後のハーフマラソンのみになりました。さぁ大変!1ヶ月しかありません。ハーフの場合、1時間28分を切らなければ大阪国際の基準を満たせません。フル3時間10分のペースは4:30/kmで良いので、ロングに強いわたしにとってはその頃の練習でも十分に可能性はありました。でもハーフ88分切りとなれば4:08〜4:10/kmで走らなければなりません。8月末時点では、このペースでたった20分でさえ走れなかったのです。陸上経験がないことの辛さはこういう時に出る。少しずつ少しずつ気づかぬうちに成長はするけども、意図して速くは走れない。
スピード練習の理論では「距離が短ければその分速いペースで走れる」のが全人類の常識かのように説かれていますが、わたしはたとえ400mだったとしても今より速く走る方法がわからないのです。距離が短くても長くても回数が多くても、自分の全力疾走がだいたい同じくらいなのです。100mも200mも同じかもしれません(笑)サブ88の壁はとてつもなく高く感じました。本当に辛い1ヶ月でした。
目標を達成するために、残り1ヶ月やれるだけやろう!
そんな風にコーチと話したものの、今年の夏は毎日のように早朝から30度を超え、インターバルをまともにこなせなくなっていました。どんどん落ちていくペース。グダグダな練習。慢性的な脱水症状。疲労が蓄積してぎっくり首になる(なんだそれ)。それでも、目標タイムを目指すために練習はどんどんハードになり、設定ペースも上がっていく。
いよいよそれについていけなくなり、インターバルの3本のうち1本走っただけで潰れて、あとはヨレヨレジョグをするなんて日までありました。辛くて悔しくて涙混じりの汗が顔を滴る毎日。生活にも影響が出て、これは体も心も限界だな、と感じてコーチに「もうハーフはやめます」と告げました。もういいや、今年は。仕方ない。諦めたくない、それでも諦めたくないけど、もう諦めよう。ハーフの2週間くらい前のことでした。その時、わたしの目標は夢に変わってしまいました。これで終わりなのか、わたしらしくないけど仕方ない、と思っていました。
でも、わたしはどうも運と縁を呼び寄せる妙な能力があるようで…
再び、暗夜に火を灯す
わたしの原動力は目標です。聖火のように、灯火(目標)を手に、いろんなことに挑戦したい。なのに今年は、ひとつめの灯り(サロマサブ9)を失い、ふたつめの灯り(長井マラソン)も失いました。その度に消えては灯し、消えては灯してきたけれど、こんどは自分の実力不足で今にも灯りが消えそうな状態です。すっかり落ち込んでいました。再来年に再挑戦だなんて、遠いなぁと。
ある日、封を切るのも気が乗らなかったハーフの参加案内を3日寝かせて開いたら、そこには同じレースが12月頭にも開催されるというチラシが入っていたのです。12月!例年、大阪国際の参加要項が発表されるのが9月(現時点で発表なし)、申し込みは10月〜12月10日頃。それまでに基準を満たす人が申し込みできます。
間に合うかも!
そこで、ほぼ諦めていた9月末のハーフも出ることにしました。12月を本番とするならば、今の自分の実力を知るには絶対出ておくべきです。ほとんど経験がないハーフマラソン。目標にどのくらい遠くて近いのか。
トモさんから告げられていた今の実力は1時間31分くらい。直近の練習から割り出したものだから正確です。かなり遠い。ただし、本番に強いタイプなので、もしかしてもしかすると意外といい線いくかもしれない。90分は切ろう、そうしたら自信につながるはず。
そこから「風向きが変わる」というのはこういうことを言うのかと思うくらいに次々にいろんなことが有利に働き始めます。レース前になって急に気温が下がって涼しくなり、練習もうまくいくようになる。仕事も思いのほか順調に進み、直前まで入っていた出張がキャンセルになってしっかりレストも取れた。体調も直前で良くなってきて、前日は土砂降り予報なのに当日は朝から晴れ予報。神様か誰かが、わたしに走れと言っている。これはそうにちがいない。
12月にもう一度チャンスがあると思って、今回は気負わず楽しんで走ればいい、そう思うとうんと気持ちが楽になりました。真っ暗だった視界が微かに明るさを取り戻したのです。
好きな言葉は「有言実行」
座右の銘は?と聞かれることがあります。いくつかあるのですが、よく言っているのは「思い立ったが吉日」です。わたしの性格そのまんまです(笑)その次に好きな言葉は「有言実行」です。ハーフマラソン直前のトモさんとのビデオチャットで、こう宣言しました。
「今回は突っ込もうと思います!ダメでもいいから、どこで潰れるのか、どこまで行けるのか試したいので思いっきりいきます!」
そうだね、楽しんで!と送り出してくれました。
ハーフマラソンの結果は、
1:28:16
でした。
気負わず楽しく走る!今回はタイムは気にしない!なんて言っても、ロードの大会慣れしていないわたしが緊張しないはずかありません。お医者さんに心臓止まってんじゃないのと言われるくらい安静時心拍が低い(45くらい)わたしが、トイレの行列に並んでいるだけで朝から爆上がりでした。深呼吸しても、山の稜線や南国リゾートを思い浮かべても、100を下回ることはなく、息をするのも一苦労でした。
陸連登録ランナーは前方スタートなので、怯まずできるだけ前の方に立ちました。さすがに3列目までは怖くて近付けなかったけど、その後ろくらいに位置取りしました。グロスタイムだもん、スタートしたらすぐにマットを踏みたい。スタート1分前、周りのランナーがやたら太ももをペチペチ叩き出すので、何事かと思いながら、真似して控えめにペチペチしました。
スタート直後からめちゃくちゃ速い人が飛び出して、その流れに巻き込まれて最初の1kmは 3:47/km。飛ばし過ぎ?わかっています。だってわたしのインターバルの時の最速ペースです(笑)。あえて巻き込まれたんです。いいんです、潰れる覚悟で、行けるところまで行くでいいんです。そう思いながら走りました。3kmくらいで落ち着きを取り戻し、平均4:06/kmを目安に走りました。アップダウンがキツく、コーナーリングも多いコースなのでペースが乱れがちだけれど、5km×4の周回だったので1周毎にうまく均せるように努めました。
5kmくらいで見つけたトライアスリートっぽい女性ランナー2人。安定したペースで周りもなんとなく彼女たちを意識しているように見えます。あっという間に彼女たちを囲うようにして集団ができ、わたしも必死について行きました。おそらく4:05/kmくらい。でも、彼女たちがペースを上げているのかわたしが落ちているのか、その差は100m、200mとどんどん開いていき、後ろ姿が小さくなっていきます。なんとか視界に入るようにと3周目までは4:06〜4:07/kmで粘りましたが、4周目でついにガクンと落ちました。
まさか3周目(15km)までそんなペースで走れると思っていなかったので、あまりにも必死すぎたのでしょう、平均ペースは意識していたけど、全体のタイム(スタートからの経過時間)を見ているようで見れていなかったのです。自分の微妙なタイムに気づいたのは20kmの表示を見つけた時でした。
うわっ、ヤバイ、88分切りから15秒遅い!あと15秒巻かないと!
そこからの1kmと少し、ア”〜ア”〜と周りが引くような唸り声を上げながら(笑)全力で走りました。そりゃもう脚がもげんばかりに走りました。男性ランナーにとってはおそらく88分なんていう中途半端なタイムは関係ないのでしょう。すでに85分切りを諦めた人から「???」みたいな顔で見られながらも走りました。吠え方も走り方も獣みたいだったので周りがサ〜と避けてくれました。
最後のコーナーリングふたつ。
誘導のコーン、ギリギリに走る。
ゲートからたった10m、最後の角を曲がった時に見えました。
1:28:10…
うわあああああ…マットを踏んで2歩で泣き喚きました。あまりの泣きっぷりに応援に来ていた友人がびっくりして道の反対側から急いで駆け寄ってきてくれました。ハンカチを渡されても泣き止まないわたし。その場に立ちすくんで動かず泣き喚くわたし。「惜しいね、めちゃくちゃ惜しいね、でもほら、次は絶対切れるじゃん!すごいよ!」となだめられながら、それでもしばらく泣きました。
最低でも1時間30分切りと思っていたので、今回の目標は達成したのかもしれません。でもたった16秒!結果論でしかないけどまさかの16秒!コーチも「えっ?」って思ったことでしょう。練習でそんなペースで走れなかったやーん!と思ったことでしょう。距離が短くなればなるほど数秒、さらにコンマ何秒がどんなに難しいものであることを練習で痛感してきたのですが、やっぱり悔しかった。とんでもなく悔しい!悔しい悔しい悔しい!1kmにつき1秒削り出せていれば、88分を切れていたのです。いや、それが大変なのだけども!そうなんだけど!1秒って!1秒って!1秒ってーーー!
泣き疲れて、そして決意しました。あと2ヶ月で、絶対その16秒、更新してみせる。なんなら余裕を持って88分切るんだ!悔しいけど、遠くて近い、デファクトスタンダード。手にできないわけじゃない。わたしにも、可能性は、ある!あと2ヶ月。もう一度、頑張れる。消えかけた灯りはまだいきてる。再び暗闇から脱して、また頑張っていけそうです。
暗夜に灯火を失わないために
直前になって目標に全く届かない上に、トレーニングも仕事の調整も体調も全てが悪循環になってしまって、どうにもこうにもうまく行かくなってしまった時、トモさんこんなんじゃあ面白くないだろうなぁ、ガッカリしてるんだろうなぁと感じて「せっかくコーチングしていただいているのに申し訳ありません」と謝ったのです。そうしたら、
“エマちゃん、大変だね、そんなに気を落とさなくても!”
“何かが終わったわけではなく、逆に始まったばかりだから!”
“自分の目標はエマちゃんの目標を支えること!”
と返ってきました。
そんな風に言ってもらえたことで背中を押され、今自分のできるめいっぱい、いや、それ以上のパワーを出し切ることができたのかもしれません。練習がハードだったり、厳しい時もあるけれど、大事な局面では必ずフォローしてくれる。オンラインだからほとんど文字のコミュニケーションだけど、いつだってメッセージはトモさんの声で脳内再生されるくらいトモさん節で届くのです。
キツかったけど、楽しかった。悔しくて泣いたけど、楽しかった。レース後に友達から送られてきたわたしの写真は全部笑顔でした。悔いなくやるって、簡単に言われがちだけど、結構むずかしい。
コーチ、わたし、悔いが残らないように、もう一度頑張ります!
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