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暗夜に灯火を失わないようにー前編

暗夜に灯火をうしなう
【あんやにともしびをうしなう】

【解説】暗い夜道を歩く時に明かりを失ったり、灯火を目指して進んでいたのにそれが消えたりすれば、どうしてよいかわからなくなる。そこから、頼りにしていたものが失われて途方に暮れるたとえ。

ーまさかこんな世の中になるなんてね

今年何度言ったでしょうか、この台詞。もうそれ以外、表現のしようが無いから仕方ないですよね。先行きが見えないなかで、徐々にいろんなことが再開され始めているものの、このまま元通りの世界になるなんて誰も思っていないでしょう。まさに暗闇のような今。ランナーにとっても悲しいかな決して明るい未来だと言い切れません。

 

全ての始まりは2月

時は2020年2月。コーチング開始から1ヶ月。フルにウルトラ、絶好調でウキウキの頃です。香港でステージレースに出ようとしていました。しかも!トモさんも同じレース(トモさんはステージではなく100マイルカテゴリ)に出ると聞いてすごく楽しみにしていました。しかし、早々にその目標は絶たれました。大会主催者の素晴らしく迅速な判断で中止になったのです。まだ日本では「コロナ?なにそれ?」「なんか中国で流行ってるらしいよ」なんて頃です。UTMFだって彩の国だって、まだ可能性があるんじゃないかとみんな希望を捨てずにいたはずです。わたしもそうでした。まぁ香港はデモの件も複雑だし、来年またチャレンジするか!と。でもこれが、わたしが“暗夜に灯火を失い続ける”、その始まりでした。

3月、UTMFとASO ROUND TRAILが中止になりました。UTMFに関しては仕事も兼ねていたので、仕事ごとどこかへ飛んでいきました。T.D.Tのペーサーを頼まれていましたが、もちろんT.D.Tもなくなりました。楽しみを一気に失いました。山の仕事もたくさん失くなりました。

話は年始に遡るのですが、コーチングを受けるにあたって、まず目標設定をしました。「今年は”速く走れるようになる”年にする!そのための努力を楽しむ!」と決めていたため、最初に決めた目標はフル3時間15分切りとウルトラサブ10でした。わたしにとってはかなり勇気を出して告げた目標だったのですが、どちらもコーチング開始から1ヶ月以内で達成してしまったのです。そこで、すぐさま目標を上方修正して、サロマ湖ウルトラマラソンでサブ9を目指すことにしました。上方すぎる修正ですが、サブ10を出した2月のウルトラがアップダウンやコースロストがある大会だったので、タイムが出やすいと言われるサロマなら非現実的でもないだろうという読みでした。長距離が得意なわたしにとって、ロード×スピードの練習としては最適だと思っていました。

「夏になったらインフルみたいに落ち着くよね!」
「サロマの時期ならさすがに開催できるよね!」

でも、春のトレランレース同様に、あっさり中止となりました。飛行機も、宿も、全部キャンセルしました。練習計画も全て見直しになりました。

 

暗夜でも火を灯し続けなければ一歩も前に進めない

さて、どうしよう。途方に暮れました。今年いちばんの大きな目標を失い、これからレースが開催されるかどうかもわからない。その頃はまだ友達にも会えない、電車も乗れない、山にも行けない、ランニングも白い目で見られる。お先真っ暗?1歩も動かなくなってしまった仲間にもショックを受けました。あんな頑張っていたのに…。

Tomo’s pitのコーチングを受ける人はトレランで強くなる、あるいは目標としているレースを完走したいという人が多いでしょう。わたしの場合は目的を“速く走れるようになる”と位置付けていたので、やっぱりわかりやすい目標が欲しいと思っていました。それがロードのウルトラだったのですが、今年開催される見込みもないしそもそも大会数も少ない。じゃあフルマラソン?でも、さすがにサブ3は遠すぎます。そんな時にふと1月のフルマラソンの後に周りから言われたことを思い出しました。

「すごいね!国際出れるね!」

マラソン大会の中には、参加基準が定められているものがあります。参加資格を満たしているランナーしか出られない大会もあれば、一般枠とエリート枠が分かれているものもあります。わたしは陸上の知識が大変乏しいので(苦笑)、知っていることと言えば…日本陸上競技連盟(陸連)が公認するレースでの正式記録をもとに、いつからいつまでの期間中に何時間何分以内の記録を持っている人が申し込めるタイプのレースがあるということと、それがオリンピックや世界陸上の選考を兼ねた大会になっていたりするという程度のことです。そして「国際マラソン」の名前がつく大会はいくつかありますが、女子市民ランナーでタイムを目指す人達が「いつか出たい」という声を揃えるレースが、大阪国際女子マラソンだということです。テレビやニュースで見たことがある著名なランナーが出ているレースというイメージでした。

大阪国際、かぁ…

早速基準を調べてみると、基準タイムが年々速くなっていることを知りました。
現在の大阪国際女子マラソンの基準は

10km 37分以内
ハーフマラソン 1時間28分以内
30km 2時間11分以内
フルマラソン 3時間10分以内 


全てグロスタイムで前シーズンに記録を持っている必要があります。

マラソン大会の類にほとんど出たことのないわたしは、ハーフのPBは約10年前の1時間38分くらい。マラソンは今年の勝田で、ネットだと3:10:27だけどグロスだと3:13:17です。

決めた。よし決めた。

人生初めてのコーチのもとでの練習、人生初めてのスピード練習、人生初めての“走る練習”。やるからには徹底的にやろう。やるからには、市民ランナーのデファクトスタンダードを目指そう。そうして、「大阪国際女子マラソンに出られる走力」を目指すことに決めました。

サロマの中止にショックを受ける間を自分に与えないために、その日のうちに即刻、今年開催されそうな陸連公認のフルマラソンを全て調べました。紙のノートに獲得標高、公認有無、エントリー時期などを手書きしました。当時、まだ何十大会もあったのでノート見開き2ページがいっぱいになりました。中止の発表があるたびに打ち消し線を引く。まだ、あれがある、これがある。みんなだんだん慎重になってきて、エントリーがなかなか埋まらない。だからどのレースも毎日のように情報を拾い続けました。そのなかで「中止になったら全額返金します」と書かれていて抽選ではないエントリー形式の大会がありました。山形の長井マラソンです。比較的早い段階でエントリーしました。それから、マラソン前の準備戦として、9月に都内開催されるハーフマラソンにもエントリーしました。レース感を失った状態で一発勝負は怖いと思い、あくまで「念のため」にエントリーしたつもりでした。

続々と大会が中止になるなかで、長井マラソンだけは「開催判断」の時期が延期延期となり、夏をすぎても「開催に向けて動いています」と発信されていました。これはいよいよあるかもしれない。そう思ってこの夏も練習を続けました。

目標というのはすごく大事で、毎日の原動力になると思っています。どんなことでもいい。目標を持つことを大事にしていて、仕事でもプライベートでも目標設定をしてそれに向かって過ごすことにしています。ボウボウ燃えるには火種が必要で、火種だけではなく燃料も必要です。モチベーションを保つには、自分で火を起こし、燃料を投下する必要があると思いませんか?

長井マラソンという目標があったから、コロナ禍という前代未聞の春から夏であっても、とにかく一生懸命頑張ってこれたのだと思います。

 

練習を始めて8ヶ月。

2020826日、長井マラソンが中止になりました。

 

後編へ続く。